「ほんとに、好きになっちゃったの?」

なんて。

もう毎日自分でも考えてる。とっくに、そう思ってる。だけど。

胸の奥で鳴り響ける鐘の音。どうしようもなく、消えない。


「うん。好きに、なっちゃった」

恋っていうのは。

口に出した瞬間、誰かの耳に届いた瞬間、本格的に始まってしまうものだ。

好き。

好きなの。

本当に、好きになっちゃったみたい。


ふぅ。と、有美子が小さくため息をついた。

「…やっぱ、呆れた?」

「呆れたよ。…でもさ」

「ん?」

「あんたが悲しんでるとこ、ずっと見てるのはつらいから。

それはそれで、良かったと思う。…今度こそ、幸せになってよね」

「……」

「今度、私にも会わせてよ。その、カオル君って子と、新しい友達たちに」

「うん」

ああ。

有美子って、ほんとに、めちゃくちゃ優しい。

だけど私はセイちゃんに言われたあの言葉だけは、有美子に言わなかった。

ううん。言えなかった、のかも。


『カオルのこと好きになったら、…きっと泣いちゃうよ』