「ウソでしょ?」
私も立ち上がり、彼の元へと歩いた。
「マジだよ!!最初は流れ星かなって思ったけど
すーーーじぐざぐっ!!!ってなって消えた」
『UFO』の動きを、指で空に描いて見せる。
「本当に?」
「うん!!すげえよ!!!」
さっきまでのムードなんか雲散してしまった。
それなのに、私の心はさっきまでよりずっと。
かじれば虫歯になりそうなくらい
甘ったるく溶けていた。
「あーあ。真希ちゃんも、見てればよかったのに」
まだ星空を仰いだまま、そうつぶやく彼の
無邪気なくちびるを指でなぞり
やさしく口づけてしまったのは。
夏のせいでも夜中のせいでも失恋のせいでも
なんでもない。
恋の始まりのせいだった。


