ひらり


「桜っ!いる!?」

まだほとんどみんな帰っていない教室に慌てた様子で旭が来た。

「えっ、旭!?そんなに焦ってどうしたの?」

「桜~。良かった帰ってなくって。」

もしかして、一緒に帰ろうって言ってくれるのかな?
なんて冗談混じりに思っていた。

「いや~、まだ地学の教科書返してなかったから。」

やっぱりね。私を誘ってくれる訳ないんだから。

旭は好きな人がいるらしいけどずっと教えてくれないし。

「あ、教科書ね。そんなに焦らなくても明日とかでも良かったのに。」

教科書なんて、本当にどうでも良かった。

でも私は、ただ会えただけでも私は嬉しくて、ついにこやかになってしまう。