プラチナブルーの夏

あたしが家出してトモロウの住処に住むようになってから、

すでに半月以上が経った。
 
そこでの生活は、思っていたより快適だった。

狭くて小さなトモロウの秘密基地。
 
今のあたしの居所は、そこにしかない。ううん。

そこにしかいたくないんだ、あたしは。
 

当たり前の事だとは思うけど、母親からの連絡なんて一度もなかった。
 
きっとあの日の「馬の骨」と、仲良くやっている証拠だろう。
 

出来る事なら。
 

あたしはこのままトモロウと一緒にいたい。

住処がどこかに移動しても。学校に行けなくなっても。
 
けれどもきっとトモロウは、それを拒否すると思う。
 
トモロウとの「今」をせめて満喫する事しか、

たぶんきっとあたしには出来ないのだと思う。
 

一つでも多くの思い出が欲しくて、あたしはある日、

トモロウを駅前の広場で待っている間に花火セットを買った。

トモロウは、思った以上にそれを喜んでくれて、

晩ご飯を食べた後にさっそく花火で遊んだ。

どこか遠くの方でも、ロケット花火の音がした。
 
あたしが買った花火はもっと安くて地味だったから、

ほとんど棒花火しか入っていなかったけれど、十分に楽しかった。

シュワーと音を立てながら花火に火がつく。

きれいだった。花火も、トモロウの横顔も。