プラチナブルーの夏

その夜。
 
また例の悪夢にうなされて目が覚めた。
 
起きる瞬間ビクッと体が動いたけれど、

なんとか悲鳴を上げずに済んだ。
 
いつものように荒れる息を整え震えながら

横で眠るトモロウの顔を見る。
 
手、つなぎたいな…
 
だけど明日は早くから仕事に出かけると聞いていたので

起こすわけにはいかない。

仕方なくあきらめようと思ったその時。
 
突然トモロウの目がパチッと開いた。

「…ど…どうしたの…?」

「……んー…?……なんでもない…」
 
トモロウはふにゃふにゃと寝惚けた声でつぶやき、

あたしに手を差し出して

「…大丈夫…手ぇ…つなご…」
 
そう言ってから再び目を閉じ、眠ってしまった。

「……………」
 
この手を握ったらーーきっと、あたしにはもう、止められなくなる。
 
ーーーーー何を…?
 
わからない…ただ、一つだけはっきりわかっているのは

この手はもう『トモロウの手』ではなくて

『トモロウという男の人の手』なんだという事だけだ。
 
少し迷ったけれど、あたしは静かにその手をそっと握った。