プラチナブルーの夏

「…なんでそう思うの?」

『恋』という気持ちの存在や意味はもちろん知ってる。
 
けれど今あたしが抱いているこの気持ちが『=恋』だとは

決める事ができなかった、というか、全然わからなかった。
 
冷房が効き過ぎているファミレスのドリンクバーで、

温かい飲み物ばかり選んで飲んだ。
 
カナはココア。あたしはコーヒー。
 
指輪をつけた左手の薬指だけに、

白くて小さな花が咲いているカナの爪。
 
他の指は同色の、カナの元気なイメージにぴったりの

オレンジ色で染められている。

「なんでそう思わないのぉ??」
 
あたしの質問に、同じ質問を返すカナ。
 
白い花に話しかけるように、カナの目を見ずあたしは答えた。

「だって…こんな風に誰かの事思うなんて初めてだから…

わけわかんないよ」

「えぇぇ!!?うっそ!!!

じゃあもしかしてミズキってまだ処…っ」
 
店内のBGMをかき消すようなカナの声量、

言わんとする事にとっさに気づいたあたしは

素早く彼女の口元に手を当ててしまった。

「処女…なの?彼氏いた事ってないの?」

今度は小声で言いながらグロスを塗り直すカナ。
 
手の平のグロスをおしぼりで拭くあたし。