プラチナブルーの夏

ー誰かがあたしの背後から、首を絞めようと両手をまわす。
 
あたしは、必死でその手を引き剥がそうとする途中、はたと気づく。
 
まわされた両手の爪に、母親が一番好んで使っていた色と同じ

マニキュアが塗られている事を。ーーー

 
いつでもそこで自分の悲鳴を聞き、ハッと目が覚める。
 
夢の余韻が脳の奥にざらついた感触でへばりつき、

体の震えが止まらなくなる。
 
そんな時には横で寝ているトモロウと手をつないで再び眠った。
 
トモロウは、あたしの声に驚いて跳ね起きてしまう時には

あたしの手を握り一言、

「大丈夫だよ」
 
と言ってくれる。
 
ハードな仕事を終えた夜など、悲鳴にさえも気づかないほど

深く眠っている時には、あたしからトモロウの手をとる。
 
そんな時でもトモロウは、何も言わずにキュッと柔らかく

手を握りしめてくれる。
 

ーーーそして。
 

いつしかその手だけではなく、トモロウはあたしの胸の奥を

せつなくキュッと締めつける唯一無二の存在になっていった。