プラチナブルーの夏

それ以来あたしは、母親のいなくなる時間帯を見測り、

何度かにわけて少しずつ自分の必要最低限の荷物を

家から持ち出し、せっせとトモロウの住処に運んで行った。

『路上生活者の住処に巣作りをする自分』

客観的に見てみれば、これは相当滑稽な行為なのかも知れない。
 
それでも今のあたしにとってトモロウは心の杖であり、希望であり、

癒しであり、同じ星で生まれた人だと感じていた。
 
たまたま今までバラバラに地面に張りついて暮らしていただけの、

出会うべくして出会った人だと日増しに強く感じていった。
 

トモロウは様々な日雇いの仕事をしていて、

3日帰らない時もあれば、2日働きに行かない時もあった。

「仕事って選り好みさえしなければ、いくら

でもあるんだなって思ったよ」
 
時々聞くトモロウの仕事話は、今まであたしがこの世の掟だと

想像し信じていたものとは、全くの別ものだった。

 

リアル。

 
どすんと心に落ちる、激しさと厳しさと時折訪れる安らぎ。


……与えられた時間と与えられた課題をこなす。

心臓破りの坂道が延々と続く。
 

『人生』という名前の、リアル。