プラチナブルーの夏

あたしの涙が枯れる頃、夕立ちも過ぎ去り

あの小さいルームライトのオレンジ色をトモロウは灯した。
 
そしてしゃくり上げながらもやっと落ち着いてきたあたしの頭を、

最後に二回ポンポンと軽く触った。

「…お腹はすいてない?」
 
トモロウは数十分ぶりに口を開いた。
 
こくりと頷くあたし。

「…喉は渇いてない?」
 
再び、黙ってこくり。
 
あまりにも泣き過ぎてくたくたになってしまった。
 
うつむいたまま、あたしはぼんやりトモロウの声を聞いていた。

「…じゃあ、これからどうしたい?

家に帰りたい?まだ、帰りたくない?」
 
ーーー暴れて叫んで壊しまくった、荒れ果てた台所と

母親の甘ったるい白々しい声を同時に思い出した。

「…帰りたくない…ここにいる…ずっといる

…帰りたくない…」
 
頭を振るたびピチピチと、頬に濡れた髪が当たった。
 
かすれた弱々しい声が自分の耳とトモロウに届く。
 
帰りたくない…帰りたくない…このまま、どこにも帰りたくない…。

「…トモロウと、一緒にいる…」