プラチナブルーの夏

母親が立ち去る小さな足音を確認した後、

あたしはトイレを流し、一目散に台所へと走った。
 
不思議と心は冷静だった。
 
まずは椅子を持ち上げて、思い切り茶箪笥のガラスをぶち壊した。
 
反抗期真っ最中の、手がつけられない男子のように。
 
大きい皿も小さい皿もコップも小鉢も茶碗も全部。
 
目につくものを片っ端から放り出し、割って割って割りまくった。
 
割れた欠片が飛び散って、顔や腕から血が出てもおかまいなしに

破壊を続け、テーブルの上の醤油差しさえ払い除けた。

冷蔵庫から取り出した卵をあるだけ全部、壁や床や天井に

怒りを込めて投げつけた。
 
その間中あの女からの反応は、何一つなかった。