あたし、もしかしたら泥棒の才能があるのかも知れない。
だって母親は、あたしが帰宅したのに見事に気づかなかったのだから。
あの人の気配に気がついてしまったのは、むしろあたしの方だったのだから。
ーーーードンッ!!
心が状況判断に追いつく前に、あたしは母親の部屋のドアを
勢いよく蹴飛ばしてた。
ドアを蹴飛ばした瞬間、母親の喘ぎ声はピタリと止んだ。
一瞬にしてあたしは、全身の毛が全て逆立っていく自分を感じた。
…なるほどね。
通りであんなにご機嫌だったわけだ。
通りであたしの帰宅時間なんかを知りたがっていたわけだ。
あの女。
どっかの馬の骨、連れ込んでやがるーーー。
…気持ち悪い。
反吐が出そうだ。
そう思った瞬間。
あたしは本当に突然の吐き気を催し、慌ててトイレに駆け込んだ。
「おぇっ……」
気持ち悪くても、吐くものなんか何もない。
あたしはさっきまで飲んでいたお茶と、酸っぱくて黄色い液体を
数回に分けてパシャッと便器に吐き出した。
涙も鼻水もどんどん出てくる。激しく苦しい嘔吐の連続。
「ミズキ。ミズキちゃん!大丈夫?」
トイレのドアをノックしながら、チョコレートバーのように甘ったるい声で
女があたしの名前を呼ぶ。
それは全てあの女の部屋にいる男のために作られた声。
男に向けて、作ったセリフ。
「うるせーな、ほっとけよ!!」
あたしは苦しい呼吸と呼吸の少しの合間に、思い切り大声で答えた。
白々しい。ちゃんと名前であたしを呼んだ事すら数年ぶりのくせに。
盛ったメス猫みたいな声上げて。
『男遊び』してんのは、結局アンタの方じゃないか。
……バカにしやがって……!!!
だって母親は、あたしが帰宅したのに見事に気づかなかったのだから。
あの人の気配に気がついてしまったのは、むしろあたしの方だったのだから。
ーーーードンッ!!
心が状況判断に追いつく前に、あたしは母親の部屋のドアを
勢いよく蹴飛ばしてた。
ドアを蹴飛ばした瞬間、母親の喘ぎ声はピタリと止んだ。
一瞬にしてあたしは、全身の毛が全て逆立っていく自分を感じた。
…なるほどね。
通りであんなにご機嫌だったわけだ。
通りであたしの帰宅時間なんかを知りたがっていたわけだ。
あの女。
どっかの馬の骨、連れ込んでやがるーーー。
…気持ち悪い。
反吐が出そうだ。
そう思った瞬間。
あたしは本当に突然の吐き気を催し、慌ててトイレに駆け込んだ。
「おぇっ……」
気持ち悪くても、吐くものなんか何もない。
あたしはさっきまで飲んでいたお茶と、酸っぱくて黄色い液体を
数回に分けてパシャッと便器に吐き出した。
涙も鼻水もどんどん出てくる。激しく苦しい嘔吐の連続。
「ミズキ。ミズキちゃん!大丈夫?」
トイレのドアをノックしながら、チョコレートバーのように甘ったるい声で
女があたしの名前を呼ぶ。
それは全てあの女の部屋にいる男のために作られた声。
男に向けて、作ったセリフ。
「うるせーな、ほっとけよ!!」
あたしは苦しい呼吸と呼吸の少しの合間に、思い切り大声で答えた。
白々しい。ちゃんと名前であたしを呼んだ事すら数年ぶりのくせに。
盛ったメス猫みたいな声上げて。
『男遊び』してんのは、結局アンタの方じゃないか。
……バカにしやがって……!!!


