プラチナブルーの夏

トモロウのシャーベットは待ちくたびれて、ただの生ぬるい甘い水になってしまった。
 
あたしはといえばまだまだここで待っていられる気もしたけれど、

例の事件が頭の中に生々しい記憶としてこびりついているから、

さすがにあまり遅い時間まで一人でここにいられる自信はなかった。

「…しょうがない。また明日にでも来てみるか!!」
 
この場から立ち去る気合いを入れるため、あたしはわざと声に出し、

自分に宣言した。


家へと向かうチャリのペダルが、行きよりも明らかに重たくなっている。
 
トモロウと話をする事が出来なかったから、という理由ももちろん

あるけれど、気分屋の母親のこと、再びいちいち癇に障る事を言われるかも

知れないと思ったからだ。
 
ノロノロとゆっくりチャリを漕いでいても、どうせいつかは家に着いてしまう。

(まぁ、いいか…)
 
家に着いたら即行で自分の部屋に入ればいい。
 
ただし、あまり音を立てずに。
 
運よく母親が出勤準備の時間まで眠ってさえいてくれれば、

いつでもバタバタと遅刻ぎりぎりで出かけて行く人なのだから、

ヘタに会話をしなくて済む。
 

やがて家に到着し、チャリを止める音さえも慎重に。
 
大きな音を立てないように、あたしは静かに鍵を開けた。
 
細心の注意を払って、ドアを静かに開け中に入った。