プラチナブルーの夏

例の事件のせいで、カゴが少し凹み、変形してしまった

愛車のチャリを走らせた。
 
トモロウのところへ何か、お礼の差し入れを持って行こうと思っていたのだ。
 
…何が一番嬉しいかな。
 
そんなのわかるわけがない程、トモロウの事、あたしはまだ何も知らない。
 
たったの二回しか会ってないし、どちらの時もトラブル絡みで偶然出会っただけだから。
 
ゆっくり話をするような状況ではなかったのだから。
 
そして、鏡川に近いコンビニでシャーベットを二つと、

ペットボトルのお茶を二本買った。
 
あまりにも無難過ぎてささやかなお礼だけれど、
 
きっとトモロウは喜んでくれそうな気がした。
 

しかし。
 

トモロウは『路上生活者』だ。
 
どう考えても謎が多過ぎるし、傍から見たらきっと立派な

「アヤしい、胡散臭い男」なのだろう。
 
ひょっとしたら接近し過ぎてはいけないくらい、危険な人なのかも知れない。

それでもーーあたしはトモロウに会いに行きたかった。
 
あたしの為にあの男を追い、走ってくれたトモロウ。
 
「かわいそうにな…」

小さな声でポソリとつぶやき、あたしの頬に冷えるシートと

ガーゼをあてがってくれたトモロウ。
 
あたしのチャリを引きながら家の傍まで送ってくれたトモロウ。

それが今のところ知ってる限りの、あたしにとっての『トモロウ』という男

の人なのだから。

 

あの、ワンコの笑顔。
 
今日もまた見れるだろうか。