プラチナブルーの夏

毎日何度も覗き込んでた鏡の中。

少しずつ傷は癒え、腫れも治まり、身体の打ち身や擦り傷も

目立たなくなって来た頃、あたしは久しぶりに外出することにした。
 
白いキャミソールに淡い紫の薄手のカーディガンを羽織り、

ジーパンを履いた。

それから、長い髪を頭のてっぺんでおだんごにまとめ、家にいる間

まったく構ってなかった爪に水色を乗せ、足の爪も同じ色に揃えた。

「どこか、行くの?」
 
振り向くと、母親がまたいつの間にかドアを開け、凭れるようにして

立っていた。

「うん。ちょっと」

「何時頃、帰って来るの?」
 
そんな事を聞かれたのは初めてだった。少し驚きながら「なんで?」と聞くと

「だって…また、変な大怪我してきたら大変じゃない」

「………夕方くらいには帰ると思うよ。それに、もう遅い時間に

危なそうな場所は通らないから大丈夫」

「そ」
 
母親はフッと小さな溜息を漏らし、「行ってらっしゃい」と微笑んだ。
 
自分に向かって微笑む母親を見たのは、一体いつ以来だろう?

あたしが襲われたりしたから、それで怪我をしたから、母親はまろやかな態度で

接してくれているのだろうか。
 
なんだか、信じられない。
 
けれどもとにかく「行ってきます」と小声で答え、あたしは家を出た。