紹介をきっかけに、リツコとユウスケさんがデートをする時に、一緒に遊ぼうと誘われる事が増えた。

たまにしか会えない二人の時間に割り込んでいるような、ココロ苦しい気
持ちになるたび、あたしは何度もリツコに確認したけれど

「えーんよそんなん気ぃ使わんでも。二人が仲良くなってくれたら私も嬉しいしな。
ユウスケもミズキの事、気にいってるみたいやし」
 
そう言って屈託なく笑うリツコの言葉に甘えながら、それからも三人で会う機会はどんどん増えていった。
 

そんなある日、あたし達は地元にある一番大きなカラオケ屋に行った。

たっぷり三時間歌って会計を済ませた後、出入り口に下りていく階段の途中で

「ゴメ~ン!二人とも先に出ててや。トイレ行って来るわー」

と、リツコが店内のトイレに引き返していった。

「つか、あいつウーロン飲みまくってたもんな」

「部屋の冷房もきつかったのかもよ?リツコ、冷え性だし」

初めの頃と同じく、『ユウスケさん』『ミズキちゃん』と呼び合ってはいるけれど、

あたしとユウスケさんは、もう二人きりでも気まずい空気にならない、気安く話せる仲になっていた。

狭い踊り場でリツコを待ちながら喋っていたら、ドヤドヤと階段を下りて来た集団と目が合った。

「あれっ?」
 
一番先頭のヤツが、声を上げた。あたしは反射的に、身を硬くした。

「…おい、オッパイちゃんがいるぜ~?」

「うっそマジ!?」

「あ、ほんとだ。オッパイちゃんちーっす!俺らの顔、覚えてる?」

「相変わらずオッパイでかいっすね~。毎日暑いっすよね~」
 
集団は、からかうように次々とあたしに話しかけた。
 

…コイツら全員、大嫌い。
 

せっかくの楽しい夏休みなのに、なんで会わなきゃいけないの?最悪な偶然。
 
リツコ、早く戻って来て。
 
ユウスケさんは、コイツらの言葉に一言も口を開かないあたしを見て、

ちょっと不思議そうな顔をしていた。けれど、

「オッパイちゃん、その人彼氏?結構、年上っすよね?彼氏サン!」

 
集団の中の誰かがユウスケさんに話を振ったとたん、

「そうだけど…てか、お前ら、なんなん?」

ユウスケさんの表情は、見る見る曇っていった。