「お願い………ね、触って?」
 
夜の最後の一滴が、たった今。
 
ピチョンと微かな音をたてあたしの心の奥深く、

小さな冠を作って、落ちて来た。
 
体中を甘い液体が巡るような気持ちが、

どうしようもなく溢れ出てきた。

「あのね、触ってくれたらなんだかね、

何かが変わる気がするの」
 
照れ隠しに、慌ててあたしは言った。

「触るの?俺が?」

「うん」

「…それは……やめとこ」

「なんで?」

「相手が俺とか、かわいそー。

いつか、大好きな人が出来たら、

その人に触ってもらいな」
 
 トモロウはそう言って笑ったけれど、あたしは

泣き出したいような気分になった。

そんなの、気にしてくれなくていいのに。

「あたしはここで…トモロウのこの秘密の基地で、

トモロウに……がいいの!」

 
もう一度身を少し起こして、トモロウの唇を唇で

何度も軽くノックした。
 
お願い。お願い。あたしはあなたに。あなただけに触られたい。

トモロウ。
 
今度は何も言わず、あたしのキスで起き上がるおもちゃみたいに

トモロウは身を起こした。
 
ゆっくりと、あたしの髪を梳かす指の動きが

あまりに切なくて、小さな声が漏れた。
 

そしてあたしのカラダとココロは、その夜

トモロウに、ずっとずっと愛され続けた。