そして、いつだかトモロウがあたしにしてくれたように

何も言わずに泣き終わるまで、ずっとずっと頭をなでた。


「……ごめん……」
 
ポツリとトモロウが小さな子供のようにつぶやいた。

それは、もうとっくに夕空の余韻など、跡形もなくなった頃。

「…どうして謝るの?…」

「……無理やり連れて来て…

しかも勝手に泣いてるし……」

「…ハハッ!…」
 
思わず、笑ってしまった。

「確かにそうだけど、…そんな事ないよ」
 
なぜだか急に、母親のやつれた顔を思い出した。
 
病院の敷地内から離れ、あたし達はすぐ近くにある

川沿いのベンチに腰を下ろした。

たっぷりとたわむ黒い川面に映る、街の明かりが

とてもきれいだった。
 
風はあたしの髪をなびかせ、

トモロウの煙草の匂いと混ざり、

静かに通り抜けて行く。