プラチナブルーの夏

「お待たせ致しました。ミヤウチマスコ様の

病室は、3階の302号室です」

「…どぅも…」
 
もうすぐ面会時間が終わる頃なのだろうか。
 
エレベーターへと続く通路には、見舞い客らしき人影が

全くなかった。
 
ぼんやりとした頭のままエレベーターを降り、

3階のナースステーションで再び尋ねる。

看護師さんが

「今はもう落ち着かれて…

眠っていらっしゃるかと思いますが、どうぞ」
 
病室へと案内してくれた。
 
もう、どうでもいい。
 
さっさと終わらせて、さっさと帰ればいいか……
 
あの女がいるはずのベッドには既にカーテンが引かれていた。

「お顔だけでも…」

と看護師さんに促されたので断るわけにもいかず、

あたしは静かにカーテンの僅かなすき間からベッドを覗いた。

「……………」

げ。
 
起きてるじゃん!!
 
目が合ってもお互いに無言のままだった。
 
この人…こんな顔、してたっけ?
 
明らかに以前入院した時よりも顔色が悪く、やつれている。

そのくらいの事は、すぐにわかった。

「……………」
 
だからと言っても、特に話す事など思い浮かぶわけもない。
 
結局あたしは無言のまま、カーテンを閉めた。
 
向こうからの反応も、特にはなかった。

ただじっと、あたしの顔を見ていただけだ。
 
他人以上に他人同士のうすら寒い、数十秒の面会。