プラチナブルーの夏

次の日の、夕方の事だった。
 
住処に、置き物のように転がしてある携帯が

突然、鳴った。
 
番号に見覚えはなかったけれど、何となく嫌な予感がした。

知らない男の声だった。
 
病院の外からかけている、と言った。

なんのことだかわからなかったがどうやらまたしても母親が

救急車で運ばれたらしい。
 
トイレにいっぱい血を吐いた、とその男は言った。

「はぁ」としか答えなかったあたしは、

この男があの馬の骨なのかなぁなどとぼんやり考えながら通話を切った。

とにかくすぐに来て欲しいと言われたがやはり気が進まなかった。

「どうした?なんかあったの?」
 
トモロウは真剣な眼差しであたしを見ていた。

「なんかまた母親が倒れたらしくてさぁ。血吐いたらしーよ。

酒ばっか飲んでるからね、あのヒト」
 
あたしの呑気な言葉に突然トモロウは声を荒げた。

「バカかお前!!病院どこだよ!!?」
 
びっくりした。
 
こんなトモロウは初めて見た。

「え…どこだっけ…たぶん前と同じ藤岡病院…?

…でも、あんま行きたくないよ、あの人とは喧嘩中だもんあたし」

「いいから!!早く後ろ乗れバカ!!!」
 
なんなの、一体?

「バカバカ言わないでよバカ!!」