花簪 ーはなかんざしー




「…ほら、可愛いでしょう? 」



正面の彼が言葉を失くす。

振り返らなくてもわかる。

きっと牧さんは
愛おしげに私を見て
凄艶な笑みを彼に向けている。



ーー そんな風にされたら、私…




「さ、楽しんでおいで。」


送り出された後
開いていく距離が、寂しかった。







その夜は、目の端で揺れる花弁と共に

いつまでも
牧さんの温もりが消えなかった。




ーー 微熱は、続く。