「画鋲とって」
「はい」
手を差し出され2つ渡す。
八神くんはさっきから無言で掲示板に広用紙を貼っている。
普段 涼太以外の男の子と一緒になる機会が
あまりなかったから
あたしも何を話せばいいのかわからない。
涼太は饒舌で自分から話題をふる。
でも八神くんは
涼太と正反対。
肌の色もそんなに焼けてなくて
背は涼太より高い。
何より あまりしゃべらないのが一番違うところだと思う。
一枚のポスターが目に入る。
「...あ! これ、うちのクラスの子が書いたのだ!
海をイメージしてて、あたし好きで...」
ハッ、と我に返る。
気づけば 八神くんがじっとあたしを見ていた。
カーッと熱くなる。
「あっ、あたし2階に貼ってくるね」
八神くんが早めに帰りたいって言ってたことを思い出す。
画鋲 画鋲...。
口火を切ったことが少しだけ恥ずかしくて
内心焦っていた。
