キミと恋に落ちるまで。




「真っ赤ね」


小さく溜息をついて、あたしを見下ろす目。







ピピッピピッ、と響く機械音。


そこに表示されたのは〝38.3〟の数字。



お母さんが椅子から立ち上がると

「どうだった?!」と不安そうな声が聞こえてきた。


「ごめんね、涼くん。葵、風邪引いたみたい」


そう言って部屋を出ると、代わりに心配そうな顔をした子が入ってきた。



「葵ー、やっぱ無理?」


「ん...ちょっと無理、かな」


布団から顔を出し、
少し弱く笑顔を作る。



「えー、今日バス旅行なのにー?」


「えー、つまんねー」と布団に顎を置いて文句を言う。


そういわれましても、ね...。



原因は昨日 雨に濡れたのにちゃんと乾かさなかったせいだろう。