キミと恋に落ちるまで。




「...うん...そうだね」


普段彼と話さないからか
あたしも上手く会話ができない。


「明日バス旅行なのにね。水族館だっけ」


「うん...」


彼は外を眺めたまま、
あたしは返事しかできなかった。


彼の表情を見ようと、顔を上げることもできない。





――――あ....もしかして...



「――――傘...忘れたの?」


頭で言葉をつなげる前に
口が先に動いていた。




すると彼は
照れくさそうに苦笑した。


その表情を見ると
自然に傘を持つ手に力が入った。




「...あのっ...!」


勇気を出して声を出すと
彼の視線が向けられた。



「これ...使って?」


ぐいっ、と傘を差し出す。

照れくさいからうつむき気味に。