背の高いスイムの後ろから、靴音が鳴らないように
裸足で地下室を抜け、
本当に久しぶりにカスカは真夜中の風に吹かれた。
言いようもなく心地が良かった。
「スイム、どうして鍵なんて持ってるの?」
「これでもここにずいぶん長くいるからなぁ。
どこに鍵があるかも知ってるし、一度脱走した時に鍵屋で
スペア作っておいたんだよ」
「すごい。よくバレなかったね」
「俺、基本は長年の模範囚だからね。
その分チェックも甘いのよ」
「あははは!そっか」
久しぶりに、心から笑った。
髪を短く切ったせいで首筋までもが涼やかな風を楽しんでいる。
象の滑り台、いつの間にかそこはカスカとスイムの語らう場所の
定番になっていた。
「夜明けまでまだ二時間以上はあるでしョ。語ろうぜ、色々」
「うん。ありがとう。ごめんね」
「なんで謝るの?」
「私と…ユルカの事、心配してくれてるんでしょ?」
んー。んー。まぁ、それも大きいけどなぁ。
歯切れの悪いスイムの返事。
「他にも何かあるの?」
「んー。俺ね、君の事、好きなんだわ。
…それが一番大きいかなぁ」
「えっ…………」
うわぁ黙んないでくれぇ!!と、スイムは頭を抱えた。
照れているのだ。
「あのさぁ、カスカがさぁ、カイの事好きなの知ってるけど。
俺の気持ちも伝えておきたかったんだよ」
「……うん」
見上げるとそこには、藍色の空にいくつもの大粒の星が煌めいていた。
「でも…どうして、私なの?」
カスカには、スイムが自分を好きになった理由にが、
本当に全くわからなかった。
「んー。前にさぁ、俺の変な能力の話したじゃない。
その時カスカ、俺のこと『つらかったね』って慰めてくれたでしョ?
……そういう反応してくれた人、今までいなかったんだ一人も。
ただ不気味がられて、友達もどんどんいなくなって…
でもここに入ってカイに会って、あいつは自分も変わり者だから
俺の事、変な目でみないで普通に接してくれたよ。
だから嬉しかった。でも女の子に初めて受け入れてもらえて、
それがカスカで……それがほんとに、なんかすげー、
むちゃくちゃ嬉しかったんだ」
単純だよなぁ俺。そう言ってスイムは朗らかに笑ったけれど、
カスカの胸はぎゅうと苦しくなった。
そんな「ささやか」な事を本気で嬉しく感じるスイムの、
一人ぼっちで辛かった日々を思うと、また涙が出そうになった。
裸足で地下室を抜け、
本当に久しぶりにカスカは真夜中の風に吹かれた。
言いようもなく心地が良かった。
「スイム、どうして鍵なんて持ってるの?」
「これでもここにずいぶん長くいるからなぁ。
どこに鍵があるかも知ってるし、一度脱走した時に鍵屋で
スペア作っておいたんだよ」
「すごい。よくバレなかったね」
「俺、基本は長年の模範囚だからね。
その分チェックも甘いのよ」
「あははは!そっか」
久しぶりに、心から笑った。
髪を短く切ったせいで首筋までもが涼やかな風を楽しんでいる。
象の滑り台、いつの間にかそこはカスカとスイムの語らう場所の
定番になっていた。
「夜明けまでまだ二時間以上はあるでしョ。語ろうぜ、色々」
「うん。ありがとう。ごめんね」
「なんで謝るの?」
「私と…ユルカの事、心配してくれてるんでしょ?」
んー。んー。まぁ、それも大きいけどなぁ。
歯切れの悪いスイムの返事。
「他にも何かあるの?」
「んー。俺ね、君の事、好きなんだわ。
…それが一番大きいかなぁ」
「えっ…………」
うわぁ黙んないでくれぇ!!と、スイムは頭を抱えた。
照れているのだ。
「あのさぁ、カスカがさぁ、カイの事好きなの知ってるけど。
俺の気持ちも伝えておきたかったんだよ」
「……うん」
見上げるとそこには、藍色の空にいくつもの大粒の星が煌めいていた。
「でも…どうして、私なの?」
カスカには、スイムが自分を好きになった理由にが、
本当に全くわからなかった。
「んー。前にさぁ、俺の変な能力の話したじゃない。
その時カスカ、俺のこと『つらかったね』って慰めてくれたでしョ?
……そういう反応してくれた人、今までいなかったんだ一人も。
ただ不気味がられて、友達もどんどんいなくなって…
でもここに入ってカイに会って、あいつは自分も変わり者だから
俺の事、変な目でみないで普通に接してくれたよ。
だから嬉しかった。でも女の子に初めて受け入れてもらえて、
それがカスカで……それがほんとに、なんかすげー、
むちゃくちゃ嬉しかったんだ」
単純だよなぁ俺。そう言ってスイムは朗らかに笑ったけれど、
カスカの胸はぎゅうと苦しくなった。
そんな「ささやか」な事を本気で嬉しく感じるスイムの、
一人ぼっちで辛かった日々を思うと、また涙が出そうになった。



