ドン、と下腹に突然鈍痛を覚えたカスカは、

うっすらと汗が滲んできた。

ほとんど食事も出来ず、ユルカを置いて部屋へ戻った。

お腹が痛い。それだけ言ってゴロリと床に寝そべったカスカに、

チャルは布団を敷いてくれた。

そして、まだ自分の食事も終わってないだろうに、

ユルカもすぐに部屋に戻り、寝ているカスカの耳元で遠慮がちに尋ねた。

「ねえカスカ」

「…何?」

「もしかして、来たんじゃない?」

「何が?」

「生理。…それ、生理痛じゃないかな」

「………」

「痛み、ちょっと治まってきたら、トイレ行って確かめておいでよ」

カスカは、返事の代わりに布団を頭まで被り、くぐもった声で言った。

「…大人みたいねユルカ」

「え?」

何だかよくわからない。わからないけれど、カスカの中でこの時、

何かが弾けた。

今までユルカやここでの人々に対して溜め込んできた不満や不安を

吐き出すようにカスカは言った。

「自分の方が、先に大人になれて嬉しいんでしょ?

見下さないでよ。放っておいてよ。

言われなくたって、何でも自分で決められるわよ私」

「…………」

「ちょっとカスカ…」

チャルの言葉を遮って、カスカは続けた。

「そもそも、テレパシーが使えなくなったのだってユルカのせいでしょ?

私は何も変わってないもの。変わっていったのはユルカの方よ。

私達、誓ったじゃない。

ごうごう炎に焼かれていくパパとママを見ながら、

テレパシーで誓ったじゃない。

死ぬまでずっと二人きりだって。ずっと二人でいようって」

『死ぬまで』の部分でユルカの顔色がサッと変わったのをチャルは見た。

そう…死ぬまでよ。

カスカはユルカの首からぶら下がっているネックレスを

射るように見つめた。



-死ぬまでよ。