チャルは、言っていた通り部屋に戻ってきてはいたけれど、

夕食時に姿を現さなかった。

相変わらず不味い夕食をとりながらユルカとカイは今どこにいるのか、

チャルはどうしてしまったのか。カスカはそればかりが気になった。


夕食の食器を片付けている時に、ブルーが私の元にやってきて、

この建物には地下室がある事を明かした。

折檻をされるような心配はないけれど、窓もない小さなコンクリートで出来たその部屋は

一日閉じ込められるだけで気が滅入るのだと言う。

ブルーも一度だけそこで過ごしたことがあるそうだ。

「でも、カイと二人一緒だから、少しはマシな気持ちでいられると思うよ」

「うん…そうだよね。一人でいるよりは全然いいだろうね」

ユルカとカイの安否を心配しながらも、やはりカスカの胸の中では小鳥達が

依然暴れ続けていた。



「…こんなところが、あったのね」

独り言のように、ぽつりとユルカは言った。

夜、食事を運んで来たのは、毎日見かける配膳のおばさんだった。

「ここに置いておきますね。食べ終わった食器も取りにくるから。

ドアの鍵はこちらから閉めさせてもらうわね」


『牢獄』


という言葉がユルカの脳裏に浮かんだ。

初めてこの施設にやってきた時に『囚人みたいね』と冗談交じりにカスカに言ったのは、

当たらずも遠からずだったようだ。

カイは黙って食事を始めた。あっという間に平らげたかと思うと、

硬いコンクリートの床にごろりと寝転んだ。

ユルカはなかなか食が進まない。進むわけが、なかった。

「それ、いいじゃん」

突然、カイが言った。

「え?」

「ネックレス。似合うんじゃねーの?」

よくわかんねーけど。と言って、カイはユルカの目を見た。

「うん…ありがとう」

ユルカも、カイの目を見つめた。

まっすぐに視線を合わせたのは、この時が初めてだったと思う。

ユルカの胸は、キュッとしぼんだ。