カイが好きーー。
 
そう意識し始めてから、なぜかカスカは悪い夢にうなされるようになった。
 
「ドポン」という水の音。沈んでいく身体。

どんなにもがき苦しんでも、まるで身体に重石を括られているように這い上がれない。

息が苦しい。苦しい。ーーー助けて!!
 
いつも同じ夢だ。毎晩汗だくで、目を覚ます。

しんと静まり返った部屋。隣で寝息をたてているユルカの寝顔がほのかに窓から差し込む月明かりに照らされている。
 
それを見てほんの少しホッとする。

ユルカの頬に触れたいけれど、起こしてしまっては可哀相だ。
 
今日は特別、鼓動が激しいーー。顔でも洗いに行こうかと、カスカは静かにドアの外に出た。

 
廊下を歩いていくと、ここにも月の明かりは差し込んでおり、真夜中でも怖くなかった。

が、廊下の途中にある水道の栓をひねる時、ふと窓の外に目をやると人影が二つ見えた。

ぎくりとしたカスカはその人影をじっと見つめた。あれは…カイとスイム?
 
幻のように蒼白く光る二つの人影に近づくため、ちょっとびくつきながらもカスカは外に出た。

思っていたよりも外はきんと冷たかった。
 
象の形のすべり台にもたれかかっていたのはスイム。

その横にしゃがみ込んでいつものように編み物をしていたのが…カイ。