それからの一週間、この小さな施設の中は、とても騒がしくなった。

ポンの誕生祝いの為にボール紙や折り紙を使って、食堂に飾るものを作る子、
紙粘土でマトリョーシカを作る子、砂絵を作る子…

拙いけれど、それぞれがそれなりに素敵なものを作る事に感心した。

「みんな、手が器用なのかな。あんまりヒドいもの作ってる子っていないよね」

「うん…それだけ、ここでの生活に慣れてるからっていうのもあるかもね」

少し苦そうに笑いながら、ユルカは答えた。

そういう自分達は毎日毎日苦戦しながら、窓の飾りに使う花を作り、貝殻をカラフルに塗った。

今は、プレゼント用のTシャツを作ろうと相談している最中だ。

チャルはそんな彼女達を横目でちらと眺めたり、マットな水色の爪をした細い指に煙草をはさんで、

何かを作る様子もなく部屋の窓の向こうを見たりしていた。

「ポン、ちょっとこっち来て」

俄かに自分がスターになったような気分なのだろうか。

初めて出会った時に見せた卑屈な笑いとは違う、どこか優越感を漂わせるような表情をして近づいて来た。

メジャーで彼のサイズを測る。近づくと、ぷんと嫌な臭いがした。

きっと虫歯のせい。カスカは思わず何度か顔をそむけ息を整え、ユルカと協力し合いながら、測定を行った。

「何色のシャツがいい?」

ユルカがポンを振り仰ぎ尋ねると、「ミドリ色!かっこいいやつ」との答えが返って来た。

「カイ君が、着てるみたいなやつ」

「?」

双子達が顔を見合わせて黙っていたら、

「こないだ、スプーン取って来てたでしョ。あの、編み物ばっかしてるやつ。カイって言うのよ」

傍に落ちた灰をつまんでは灰皿に捨て、チャルが答えた。

そしてもう一度、双子は改めて顔を見合わせー。

「…ミドリのシャツ着てるとこ、見たことある?」

「ううん。まだない」

「私も」

「…………」

少しの沈黙の後、思い切ってカスカは言った。

「見せてもらいに行こうか?」

「うん。できたら、お手本にするために借してもらおう」

すぐに話は決まった。二人はポンが案内してくれた部屋のドアをノックした。

カスカはまたあの食事の時のように、なんとなく胸がざわついた。