ストロベリー

「本当にごめんなさい。手首のケガ、消毒しなくちゃね」
「このぐらい平気だって」
「だめだよ。ちゃんと手当てしないと」

私は、まだ震えている手で悠介の手首の手当てをした。

「オレ、これから仕事なんだ」
「そうなの。ケガさせちゃって・・・」
「もういいって。何も言うな。可愛い顔がだいなしだぞ」
「へっ」
「何へんな声出してんだよ。しかも顔赤いぞ」

今まで、可愛いなんて言われたこと一度だてないのに。

「悠介がいきなり変なこと言うから」
「そうか。オレは本当のこと言っただけだよ」
「バカ」

私は後ろから悠介を抱きしめた。

「オレ、そろそろ仕事行きたいんだけど」
「もう少しだけ、このままでいさせて」
「子供みたいなこと言ってんなよ。遅刻したら慶子のせいだからな」
「それは困る」

私は悠介から離れた。