ふと思い出して彼に問う。

「先生はどこのクォーターなんですか?」

「祖母がイギリス人。」

そう言って煙草を吸おうとして
「アカンアカン。」と煙草を戻した。

「別に私は構わないですよ。
気のせいかもしれませんが
先生の瞳、少し茶色ですよね。」

彼の瞳を見た。

その瞳は真っ直ぐに私を見ていて
私は目を逸らせなくなる。

彼はふっと笑うと

「いや、吸わん。
俺に気ぃ使わんくて大丈夫やで。」

そして独り言のように
「目ぇ茶色かなぁ....」
と、言うとスッと屈んで

「まさかそこまでじっくり顔を見られてるとはびっくりやなぁ....」

思いがけない顔の近さに固まる私。


「あ。アオちゃんに引かれたー。
先生傷つくわぁ。」

といつもの調子で話を続ける。


全身が心臓になったみたいになり
否定しようにも話せない。

「ひ...ひ....ひい..引いてないです。」

何とかしてしどろもどろになりながら
否定した。


「ひひひって。
ドン引きされてるやん俺。」

笑いながら彼は
「ほな。気ぃ付けて帰りや」
と塾に戻って行った。