教室に入ると新しいテキストを出した。
今日の英語の予習をするためだ。

やばいやばいやばい...
何とかして初回の授業を乗り切らなければ



授業の時間になった。
講師が来る様子はない。
どうやらよくあることみたいで
「また遅刻かよぉ」
と隣の男子生徒の呟きに
周りがクスクス笑う。

再びテキストに目を戻すと
誰かがふらっと教室に入ってきた。



知っている煙草の香りがした。



「はい。授業始めるでー」



この声を私は知っている。




たったこれだけの事だけど
私は貴方だと分かった。





顔を上げると彼と目が合った。
その瞳は少し茶色かった。


「おっ!!アオちゃんやん!
こないだはちゃんと帰れた??
保坂です。宜しくなぁ」

二カッと笑うと授業を始めた。


前は暗くて見えなかった彼の名札には
【保坂 智裕(ホサカ トモヒロ)】
と書かれていた。




心臓の音が煩かったけど
頑張って授業に集中した。