胸が、苦しい。 ぎゅっと胸が締めつけられるような感じがして、うまく呼吸ができない。 でも、その苦しさが、何だか心地いい。 なんでだろう。 私、どうかしちゃったのかなぁ…。 「垣田さんは…好きな人、いるの…?」 北野君に、突然、そう聞かれた。 「好きな人?いないよ。でも…なんで急にそんなこと聞くの?」 「なんでって……。」 北野君は、すごく困ったような、照れたような顔をした。 それからしばらく、北野君は、黙っていた。 私も、北野君の横顔を見つめて、黙っていた。