でも、エルフィノは泣き続けるばかりで、あたしの言葉を受け入れてくれたようには見えない。

そこになんと、王宮の自室でエルフィノに胸を突かれた筈のルドルフが、エルフィノの方へ向かって走って来た。

「ルドルフっ!?
 
 どうしてここにっ!」

王子がそう叫んで向き直る。

あたし達がルドルフに気を取られていた間に、エルフィノは、王子の手を振り切って、橋の下の、噴き上げて来る炎の中へと身を踊らせた。

するとそこに、駆け込んで来たルドルフがエルフィノに体当たりして橋に戻し、代わりに自分が炎の中へと落ちて行った。

その時あたしは、何故ルドルフがあんな事をしてきたのかを、理解出来た気がしていた。

自らをかえりみず、エルフィノの身代りになって飛び込んで行ったルドルフには、悲しみや苦しみの色はなく、全てをふっきる事が出来た人のように清々しく、満たされた想いが浮かんでいた。