「そんな事が、そんな事は嘘に決まっているーっ!」

そう言って、押さえる王子を振り切って、あたしに向かって来ようとする。

「エルフィノ……」

そしてエルフィノは、悲しみを無理やり憎しみに変え、その憎しみを込めた瞳で、あたしを睨みつけた。

そうすることで、傾きかけた心を必死でたて直しているんだ。

それほどまでに強く、エルフィノはラルフ王を愛していたのだ。

あたしは今まで、こんなにまで誰かを愛する事が出来る人を、見たことがなかった。

そして、あたし自身も、こんなに強く誰かを愛した事はない。

そんなあたしにも、今のエルフィノの気持ちは、痛いほどよく解った。

すると、あたしの胸元に下げているペンダントから、まばゆい光が放たれ、辺り一面を明るく照らした。

そして、その光の中に、今は亡きラルフ王の姿が浮かび上がったのだった。

ラルフ王は、一通りその場にいたあたし達を見て、最後にエルフィノの上でその視線を止め、少し悲しそうな顔をして語りかけた。