するとそこに、王子が壊した壁から、クリスが駆け込んできた。

「はるかっ!」

クリスの声に、一瞬気を取られたエルフィノは、後ろから、さっき切られたのが嘘のように素早い動きの王子に羽交い絞めにされて、クリスがその隙にあたしを引き上げてくれた。

「ありがと」

そう、お礼を言うと、クリスは軽く答えるだけで、心ここにあらずといった感じで、何か別の事を考えているみたいだった。

そんなクリスの様子に疑問を持ちながらも、とにかくここを何とかして、エルフィノに真実を知ってもらわなくちゃいけないから、クリスの事について考えるのは後にしようとそう思った。

でも、まあ、後から考えればこれが失敗だったのよね。

それはさておき、エルフィノを何とかしなきゃ。

「エルフィノ。

 あたしの話を聞いて!」

「はるか!

 こっちに来るんじゃないっ!

 クリスと逃げるんだ!」

エルフィノを押さえながら王子が言ったけど、あたしはその声を無視して、エルフィノの方へと歩み寄った。