彼方へ

 いや、もう遅いのかも知れない。

 そんな気がして……

 多分。

 はるかは王子の事を好きになりかけてる。

 でも、

 それでも、ボクは、はるかを守りたい。

 はるかはボクの事どう想ってるんだろう?

 ただの幼馴染?

 それが解らない。

 だからボクは行って来る。

 今行かなかったら、絶対後悔する。

 泉、もしボクに何かあったら、その時は、はるかの事頼むね!

 じゃあ、行って来る!」

そう言って、走り出したクリスの瞳には、不安と緊張の色が浮かんでいた……。

泉は、そんなクリスを見送り、皆の無事を祈りながら、王妃の様子を窺うべく、捜査を開始した。




前を歩くエルフィノの後ろ姿を見ていると、昨日の夜聞いたあの話を思い出していた。

自分を裏切った王に対する想いを憎しみに変えて、今までその気持ちに支えられて生きてきたのだろう。

王妃様とエルフィノ。

2人とも、道を誤ってしまって。

残ったのは悲しい想いばかり……。