彼方へ

すぐ上からそう聞かれて、あたしは、身体中から力が抜けていってしまいそうになった。

こんなのって、初めてだったから驚いた。

あたしの答えを待たず、王子は少し顔を傾けながら、

「オレは好きだよ。

 こんな気持ちは初めてだ」

そう言って、壊れ物にでも触れる様に、優しくキスした。

驚いて、王子に言おうとした言葉は、言葉になるまえに、再び王子の熱い唇に塞がれてしまって何も言えなかった。

そして王子は、少し離れると、

「君は、オレを好き?」

今度は、じっとあたしの答えを待っている。

「わ、解らないわっ」

必死の思いでそう答えると、追い打ちをかけるように、王子はその腕に力を込めた。

ひっ、ひえっ!

とりあえず、ここから抜けようと思って、何とかしてくれそうな人はいないかって、キョロキョロ辺りを見回してみた。

すると、クリスがこっちへ向かって歩いてくるのが見えた。

あたしがじっと見ていると、クリスもふっとこっちを見た。

でも、眼が合うと、くるっと方向を変えて、走って行ってしまおうとしたの。