彼方へ

そう言って、井戸に手を突っ込んで、その中にあるらしい仕掛けを動かした。

そしたら、

本当に開いたのよね。

抜け穴の入口がっ!

さっきいた壁の、蔦がいっぱいあった所に、それらをかきわけるように、ぽっかりと穴が開いたの。

「行こう。多分、中と繋がってるよ」

それで、あたし達は、その穴を通って中へ入る事にしたのだった。

その穴の中は、暗くて、足元はぬめりがあって歩きにくい。

それに狭い。

「滑るから気をつけて」

クリスはそう言って、あたし達を気遣ってくれる。

いつもの事ながら、クリスは気が利くし、それにとっても優しい。

いいなぁ、そういうのって。

なんか、凄く羨ましい。

とにかく、まあ、ただひたすら歩いてたら、ようやく中へ繋がる入口に辿りついた。

着いたのはいいけど、そこには、たくさんの魔物の群れが待ってたのよねぇ。

ううっ、どうしようっ!

と思ってたら、いきなり泉が、

「ここはあたしが何とかするから、その隙に2人は行って王子を助けて!」

ひ、ひえっ!