彼方へ

「王子」

あたしはゆっくり話し出した。

「あなたはいつもそうやって、差しのべてくれた人の手を振り切って生きて来たの?

 だとしたら、それはその人に失礼だわ。

 あなたの為にと思ってした事を、その人達の気持を、あなたは傷つけてきたことになるのよ。

 そりゃ、中には嘘をついている人もいたかも知れない。

 でも、それを見極める事をしないで逃げてばかりいるのは卑怯だわ。

 もう少し、気持ちを楽に持って。

 そうすれば、世の中には、あなたを傷つけようとする人ばかりじゃないって解るわ。

 だから信じて。

 あたし達は、あなたを傷つけたり、裏切ったりしないわ」

言いながら、あたしは、あたしの言葉が嘘じゃないって信じてもらえるよう、ずっと王子の眼を見てた。

「これから執務がある。

 話が済んだのなら出て行ってくれ」

そう言われてしまって、部屋を出て行こうとして扉の前で振り返ると、王子の悲しそうな眼と眼が合ってしまった。

「王子……」

何故、そんなにも悲しそうな眼をしているのか、後ろ髪を引かれながらも部屋を後にした。