彼方へ

それにしても、この人ちょっと暗いわ。

そりゃ、落ち着く場所もなくて不安なのかも知れないけど、カーテンを開けるとか、灯りを点けるとかしなさいよね。

これじゃあ、目が悪くなっちゃうじゃない。

それで、あたしは灯りの点けられるものを探して、やっとのことで灯りを点けた。

それから、カーテンを開けて部屋の中を明るくした。

うんうん、これでよしっと。

いい若者が、こんな昼間っから暗い部屋に閉じこもってるなんて良くないのよ。

朝の光をいっぱいに浴びた王子の横顔は、今にも光の中に溶け込んでいってしまいそうに儚げで、そして、どこか悲しそうだった。

そんな王子の顔を見つめていたら、なんだか目頭が熱くなる気がした。

少しして、王子があたしの視線に気づいて振り向いた。

「なぜ泣いている?」

王子の言葉で、あたしは自分が泣いている事に初めて気がついた。

「何か、用事があって来たのではないのか?」