そう言うと、王子は、伏せていた視線を上げ、じっと、あたしを見た。

「では……」

「でも。まだ返事は出来ない。

そりゃあ、ここに残って王妃様するのはいいなって思う。

 でも、まだはっきりと自分の気持ちをつかみきれてないの

 こんな状態で返事なんてできない。

 そんなのって失礼すぎるもの」

言って、あたしは顔を伏せ、王子の言葉を待った。

「そう……か。

 では、1週間後の戴冠式の日に返事を聞かせてほしい」

あたしが頷くと、王子は微笑んで、そして、話題を変えてくれた。

「この話は終わりにしよう。
 
 今夜は、皆を呼んで、色々な話をしたりして楽しく過ごそう」

王子は、優しくそう言ってくれたけど、あたしには、そんな余裕なんてありそうもなかった。

王子の言葉が脳裏に焼き付いて離れない。“王妃”になるって事に、あたしはとってもびっくりしていて、楽しく過ごすどころではなかったの。