「…夕日、キレイだね」

「うん」

私たちは西に沈みかけている太陽を見て、自然と黙り込んだ。
きっと一生忘れることはないだろう、とはっきり実感した。

「翔平」

「翔平は今、幸せ?」

なぜだかわからないけど私はそんな質問をしていた。

「そんなこと聞かれても、オレは汐菜の中にしかいないし…」

「そっか…そうだよね」

「ただ…」

「ただ?」

「俺が本当に存在していたなら…」

そう言って翔平は少しうつむき、それからまた顔をあげて言った。

「今、この瞬間が人生で一番幸せだよ」

私は思わず翔平を抱きしめていた。

「汐菜……?」

「私は翔平が例え、この世に存在していないとしても大好きだからね!」

私はそう言って初めて泣いた。
いじめを受けていた時だって泣いたことは一度もなかったのに。
そんな私に翔平は言った。

「そんなの、ダメだよ」

私は予想外の言葉に一瞬、硬直した。

「汐菜と俺は住む世界がちがう。」

「そんな…」

「だから…汐菜にはちゃんと現実で好きな人作って、いつか愛し合って、ちゃんと幸せになってほしい。」

結局、観覧車が地上に着くまでに私は泣き終わり、そのまま千尋と爽くんとは別れた。

そしてその数日後、事件が起きた。