妄想彼氏

「汐菜」

翔平の声にドキッとした。

「な、なに?」

「汐菜は、もう十分強くなったよ」

「そんなこと…」

「…もう、俺がいなくても汐菜は大丈夫だよ」

「翔平…」

「そろそろ…」

「やっ、やだよ!!」

まだ翔平とサヨナラなんてできないし、したくない。私は翔平がいることで、強くいられるんだ。


翔平を握りしめた手が、震えていた。そんな私を、翔平はゆっくりと抱きしめた。

「汐菜、聞いて」

「…うん」

「前も話したけど、やっぱり汐菜のことが好きだよ。だからこそ、汐菜にはちゃんと幸せになってほしい」

「私、ちゃんと幸せだよ…!!」

「汐菜の幸せは違うよ」

「えっ…」

「ねぇ、俺には分かるよ。汐菜にはもうすぐもっと大切な人ができる。」

「…」

「だからさ…」

私は深呼吸した。

「別れようか」

翔平がそう言った途端、我慢していた気持ちがどっと溢れ出した。
涙は、後から後から溢れてきて止まらなかった。

その日はちょうど雨の日だった。