驚きすぎて何も言えなくなった俺は、ひとまずその場を去った。



そして俺は寝室に行く途中、今までそんなに深く考えなかったことを考えた。




悠が俺の専属メイドとして働くようになったのは俺が7歳の頃。


(そういえば、あの頃から大人っぽかったな)


専属メイドになりたての頃は、(悠の)母親にメイドとしての仕事を教え込まされながらだった。


だから、本来は主人の世話役と教育係を勤めなければならない専属メイドの仕事の半分もできていなかった。


だが、メイドっぽい雰囲気は常に出していた。
多分それは、家系というのもあるのだろう。


そして

悠はいつの間にか一人前のメイドになり、いつの間にか俺より教養があった。


(あの頃は俺の方が勉強教えてたのに、今となりゃ反対だな)


そんなこんな考えていたら寝室に着いた。



そして寝ながらこう思ったのだ、



(あいつの素、もっと見てみたいな)



と。



そう、だから俺は大学には行かなかった。


俺は、

悠の『大人な対応』と素とのギャップを見て抱いた、今まで感じたことのなかった感情の名を

知らなかったんだ。