「翔……さ、まです」


消え入りそうな声で、上目遣いで言う悠。

俺はあくまで小動物へ思うような気持ちで可愛いと思った。




――――――。


ここから何をすれば、何を言えば、この小動物は可愛い一面を見せてくれるんだろう。

普段、皮で隠しているその可愛さを、どうすれば公(オオヤケ)にできるんだろう。

普段の俺はそんなことばかり考えている。

だからだろうか、仕事ではミスを多く出している気がする。


最初のうちは初めてだからしょうがないと言われていたが、慣れてきた今は怒られるのみだ。


お前の力量はその程度。そう思われて終わり。あとは捨てられる。


俺はこの会社の社長の息子だから、捨てられるのだけは避けられている。
だが、社員はみんな俺のことを心底呆れた目で見ているだろう。


【社長の息子だからどんなにか有望なんだろうと思っていたが…】

【こんなの、社長の息子じゃなきゃ捨てるのに…】

【さっさといなくなってほしい。仕事の邪魔…】


そんな声が聞こえてくるようだった。


そんな窮屈な場所にいるのは嫌だった。

だけど、家に帰るとそんなことは忘れてしまう。





「「おかえりなさいませ」」


夏木家のメイド達が二列になり、俺を出迎える。

家がでかいから掃除が大変で、親父がメイドを雇った結果がこれだ。

多すぎて顔と名前が一致しないメイドがたくさんいる。