どうしてそんな事を聞くのだろう? そんなあかりの眼差しに押され、今度はぼくのほうから話を始めた。
「実はね、ぼくも子供の頃から霧に包まれた夢を時々見るんだよ」
「それって何色なんですか?」
今度はあかりのほうから同じ質問をしてきた。
「薄い水色なんだ」
そうぼくが答えると、あかりはまた身体を硬直させ首をすくめた。
「私が見る夢も水色っぽいんです」
「そうなんだ」
不思議だね‥‥と互いに顔を見合わせてその夢を思い返してみる。
ぼくの場合は霧というか霞というか、そんなぼんやりとした何かが煙る街の中を、あてもなく彷徨う夢を見ることが多い。
そして胸が苦しくなって目が覚めるのだった。
「ぼくは、その水色を『ためいき色』って呼んでいるんだ」
「ためいき色?」
「そう、その夢の中で何故か凄く切なくなって、ためいきが出るんだ。そしてあかりが言ったようにぼくも胸が苦しくなって、不意に目が覚めるんだよ」
「ためいき色かぁ‥‥何だか本当に切ない色って感じですよね」
あかりはそう言って、切な気な表情を浮かべて宙を眺めた。

