「ねえ、ねえ、嶋さん」
「なに?」
しばらくの談笑のあと、あかりは意外な話を口にした。
「最近変な夢を見るんです」
「どんな夢?」
「何かいつも目の前に霧が掛かっているみたいで、周りがよく見えないんです」
「霧?」
ぼくは子供の頃から時々見る、薄い水色の霧に包まれた夢のことを思い出した。
「うん‥‥その霧の向こうに誰かがいて、私を呼んでいるんです」
「そ、それで?」
思わず身を乗り出して聞くと、あかりは怯えた表情を見せて、身体を硬直させていた。
ぼくはあかりにプレッシャーを掛けてしまうような無理な聞き入り方を止め、乗り出した身をゆっくりと元へ戻した。
そして彼女の応答をじっと待つことにした。
「決して恐い夢じゃないんですけど、何だか胸が締め付けられるみたいに苦しくなって目が覚めるんです」
そのあかりの言葉に驚愕したぼくは、再び身を乗り出して聞いた。
「その霧ってどんな色の霧なの?」
「色‥‥ですかぁ?」

