ぼくは納得して頷いた。
確かに、もしぼくが彼女と同年代の男の子だったら、急変する彼女の様子に困惑してしまうかも知れない。
でも今のぼくのように歳が離れていれば、そういったギャップは訳もなく埋められ、お釣りが返せるくらい鷹揚に受け止めてあげれる自信がある。
きっと彼女のほうもそんな包容力を期待して、ぼくのような年上の男性に好意を寄せてるんじゃないかって気がしていた。
「なんだ、てっきり‥‥」
ぼくが独り言のように呟くと、あかりは「てっきりって‥‥なに?」とぼくに聞き返し、目をパチパチさせ、何かを勘ぐったのか唇を尖らせた。
「あーっ、嶋さんたらもしかしてエッチな事とか想像してたでしょう?」
そう言うと、あかりは猫が敵を威嚇する「シャーッ!」という息を吐くような声を真似して、ぼくの腕に爪を立てる仕草をした。
「ち、違うよう」
「なにがぁ?」
こういう事って、否定すればするほどウソっぽく聞こえてしまうから厄介なものだ。
意志とは無関係に目線も泳いで定まらなかった。
謂われのない疑いに動揺を隠せないぼくの姿を見て、あかりはクスクスと笑った。
今度はぼくが「シャーッ!!」と反撃した。
満席状態で騒がしかった店内には、その後のぼくとあかりの笑い声は掻き消されたけど、ボウリング場での明るさを取り戻したあかりの姿に少し安心した。

