そして適当に見繕って、食事になるようなメニューを注文をした。
ところが彼女は、あまりお腹が空いていないのか、それとも緊張しているのか、食事にほとんど手を付けなかった。
さっきまでの元気の良さが一転して、借りてきた猫のようにおとなしく、口数も少なくなった。
「どうしたの? 元気ないじゃん」
もしかしたら食事が口に合わないのかと心配してぼくが訊くと、あかりは「そうじゃない」と答える。
それともこの食事の後に、ラブホテルにでも連れ込まれるんじゃないかって危惧しているのだろうか?
でも今日のぼくにはそんな下心は一欠けらも無かった。
いや、一欠けらも無いと言うのはぼくも一人の健康体な男性として、性の猛々しさを隠蔽してしまう偽善者的方便に聞こえるかも知れない。
かといって、ぼくのほうから一方的に誤解を解こうと弁解するのは、さらに疑わしさを助長することにさえなり兼ねないだろう。
どうしたものかと、食事の手を止め思案していると、逆にあかりのほうがこの沈黙に気を使ったようで、少し笑顔を取り戻して言葉を切り出した。
「あ、気にしないで下さい。あかりはこういう性格なんです」
あかりは自分の性格の分析として、明るくなったり、急におとなしくなったり、情緒の抑揚や起伏の差が激しい時があることを説明してくれた。
「だからお付き合いする男の人が気にし過ぎて、困惑しちゃうみたいなんです」
「そうなんだ‥‥」

