月のあかり

 
「本当よ」
 
 そう言って彼女はコクリと頷いた。
 まるで偽りという一点の染みもない純白なハンカチを、ひらりと広げて見せられたような気分だった。
 ぼくは何か誤解をしていたのかも知れない。
 
「ねえ、直樹さんは満央のことを愛してくれてたの?」
 
 今度は舞がぼくに訊いてきた。
 
「ああ、もちろんだよ」
 
 だから後悔している‥‥秘めた心の叫びまでは言葉に表せなかった。
 ぼくは唇を噛み締めた。
 
 舞は、そんな想いに耽るぼくの顔を不思議そうに覗き込み、ニコリと微笑んでこう言った。
 
「じゃあ、満月が半分になったらどう思う?」
 
 懐かしい思い出が蘇る。
 それは自宅のマンションの屋上で、満央がぼくに訊いた質問だった。
 
 ぼくは思った。ぼくの出す答えは、あの時より成長していなきゃいけないはずだ。
 
「見えないところにも月はある。だろ?」
 
 うんうん、と頷いて、舞が満面の笑みを見せ、あの時の満央のように話し始めた。
 
「そうだよ、半分が欠けても半分は輝いている。暗くて見えない部分にも、そこに月はあるの。見えない存在になってもそっと見守ってるし、やがてまた満月になって照らしてくれるんだよ」
 
 
 見えない存在‥‥‥
 
 ぼくはその言葉の本当の意味が少しだけ分かった気がした。
 胸が込み上げ、目頭が熱くなった。
 
 舞は座っていたベッドから立つと、うっすらと悲しい表情に変わった。